抹茶・日本茶

五感で味わう、函館の「お茶ペアリング」という新体験

贅沢がひしめく食の世界に、また新たな風が吹いている。函館の高級宿「望楼NOGUCHI函館」が提案するのは、お茶と料理の美しき共演「TEA PAIRING」。フーディーなら思わず唸るこだわりと、旅人なら記憶に刻む静謐な時間。嗜むたび、香りと味が語りかけてくる——そんな余白のある食体験を覗いてみたい。

函館・望楼NOGUCHIが挑む、お茶の新しい可能性


「望楼NOGUCHI函館」は、その名が物語るように、上質な“望楼”のような時間と空間を提供する高級旅館。そのダイニングで開始された「TEA PAIRING」は、従来のペアリング概念に一石を投じる存在だ。

アルコールではなく、あえて“お茶”に着目。しかも、料理一皿一皿にきめ細やかにあわせた品種、抽出、香り、温度——すべてに丁寧な意図が込められている。

お茶が主役を張る、全5コースの構成美


体験できるペアリングは全5種。季節替わりの創作コース料理に合わせ、それぞれの皿が深く息づくよう設計されている。

【前菜】には、華やかに香る「藤かおり」。ジャスミンを思わせる希少品種は、フラワリーでありながら清冽な印象を残す。

【お造り】には、静岡・掛川産「やぶきた」の深蒸し茶。「HIGASHIYAMA」と名づけられたその一杯は、急須越えの旨味を口中に広げる。

【魚料理】「KAWANE」は香気成分が桜を想起させる「静7132」。桜並木を歩くような余韻と共に、北海道の海幸が鮮やかに立ち上がる。

【肉料理】で供される「薫り燻らす」は、京都伝統の炒り番茶。一番茶を用い、ブランデーのようにゆっくりと楽しむ燻香が魅力。

【デザート】は芳醇で青っぽい「TOKYO」。東京都産の和紅茶で、マスカットのような冷ややかさが甘味に重なる。

商品・提供情報

日本茶の再発見——「和」の新たな愉しみ


今改めて見直されている日本茶のポテンシャル。「TEA PAIRING」の中に登場する「やぶきた」や「静7132」といった品種は、かつて農家や茶商のあいだで愛されてきた伝統の結晶だ。

近年注目を集める「和紅茶」の多くも、そうした国産茶葉を用いて低温発酵で仕上げる。渋みや苦味を巧みに抑え、「旨み」や「香り」にフォーカスした抽出は、まさにモダンな味覚体験と呼べる。

ペアリングの真価は、構成の“溝”を埋めること


ペアリングとは、単に“合う”ものを選ぶことではない。塩気と甘みの接点、酸と油の緩衝帯、香りと余韻の連鎖——そうした“溝”を滑らかに埋め、感覚を縫い合わせていく行為が真骨頂だ。

その意味で、お茶という存在はまるで侍のように脇を見せない。その無口さに、人が耳を澄ませる。料理を支えるのでもなく、支えられるのでもない、対等な関係――それが「TEA PAIRING」の醍醐味だろう。

望楼の時間をもう一段、深いところへ


函館という土地柄も、この体験に独特な輪郭を与える。海霧をまとう港町、硝子灯のような建築、静かな湯の川温泉——その空気が、お茶の香りをまた違ったものに変えてくれる。

まるで音楽のように、舌で感じ、鼻腔で追い、記憶に沈む飲み物。それは静かな旅のお供でありながら、心の中で思いがけず主役を射止める存在にもなりうる。

新しいお茶の世界に身を委ねるなら

味わいに深く潜ろうとするとき、「何と合わせるか」は実はすべてかもしれない。函館でしか味わえない、お茶と料理の対話。このペアリング体験は、五感すべてに潤いをもたらしてくれる。

次の旅先がまだ決まっていないなら、まずは予約ページをのぞいてみるのもいいかもしれない。一杯のお茶が、思いがけず、人生の節目になることだってあるのだから。

望楼NOGUCHI函館 公式サイトはこちら
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この記事を書いた人

J.S.A Wine Expert / Sake Diploma。酒の香りにとことん弱い。都市とローカルを往復しながら、その土地の一杯に耳をすませている。これまでに開催したワイン会・日本酒会では、のべ5000人以上に酒を注いできた。抹茶の世界にも、静かに足を踏み入れはじめたところ。飲んだ先に広がる世界を求めて、今日も一杯、のち一文。

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