能楽の美と日本酒の奥深さが交差する一夜。近年ユネスコ無形文化遺産として認められた「伝統的酒造り」と、古来より受け継がれる「能楽」が、クロスホテル大阪で鮮やかに交錯するイベントが登場する。その名も「NOHGAKU meets SAKE」。文化と酒に酔いしれる、知的好奇心が目を覚ます時間。
「NOHGAKU meets SAKE」とは何か
クロスホテル大阪が2025年6月20日(金)に開催する体験型イベント。「NOHGAKU meets SAKE」は、能楽と日本酒、それぞれに宿る日本の伝統を五感で味わうための特別な試みである。能の演目「天鼓」の一部上演に加え、ミニ講座や創作料理がセットになった“学びと味わい”の夜。
能「天鼓」とはどんな演目なのか
「天鼓」は、天の川や彦星になぞらえられる少年が亡き後も鼓と再会し、舞を通じて喜びを表現するファンタジックな演目。湖面に映る星々、鼓の音、謡の響き——この短い演目の中に、天地のつながりと人の記憶が織り込まれている。初めて能に触れる人でも物語に引き込まれる構成が魅力。
小西酒造が語る「伊丹諸白」の矜持
兵庫・伊丹に拠点を置く小西酒造は、地理的表示(GI)「伊丹」の指定を受けた酒蔵。その歴史は清酒発祥の地とされるほどに古く、今回のイベントでも「超特撰 白雪 伊丹諸白 大吟醸」をはじめとした名酒が振る舞われる。十五代小西新右衛門自らによるミニ講座も、深掘り欲を刺激する。
GI「伊丹」とは何か
地理的表示「伊丹」とは、伊丹地域で規定の製法により造られた清酒にのみ与えられる品質認証。ワインでいうAOCのようなもので、その土地ならではの気候・水質・歴史に根差す“味の正統性”を保証する。
食とのペアリングを極めるコース構成
イベントの創作コースには、日本酒の個性を余すところなく引き出す料理が並ぶ。例えば、「白雪 純米大吟醸 勝利馬」を使った鮎のコンフィや、原酒のソースで仕上げる牛ロースのグリエなど、すべての皿が“酒との会話”を前提に設計されている。この繊細なマリアージュが、食体験をさらに高める。
文化を響かせるもう一つの試み——照の会との連携
能のワークショップと舞台を担当するのが、夙川を活動拠点とする演能団体「瓦照苑」。代表の上田宜照氏は、文化庁芸術祭優秀賞を受賞するなど伝統芸能の継承に取り組む気鋭のシテ方。その能舞台とクロスホテルが関わることで、伝統と都市の結節点が生まれる。
新しい酒の世界に飛び込むなら
「NOHGAKU meets SAKE」は、五感だけでなく“心の酔い”までデザインされたひととき。日本酒と能、どちらにも興味があるけれど深く踏み込めなかった——そんな飲み手にこそ体験してほしい。大阪・なんばという都市の鼓動と、800年を超える伝統が呼吸を合わせたとき、そこに現れるのは一瞬の永遠。予約はすでに公式サイトで受付中。忘れられない時間への切符は、今ここで手に入る。