クラフトビール

【有頂天エイリアンズ】コンビニで出会える“非日常”ヘイジーIPA|セブン-イレブン×ヤッホーブルーイングの挑戦

ヘイジーIPAという新たな地平——“ビールらしくない”からこその魅力


2025年5月21日、セブン-イレブンとヤッホーブルーイングが共同開発した新クラフトビール「有頂天エイリアンズ」が、首都圏および長野県・山梨県で先行販売をスタートした。6月11日には全国販売も予定されており、「自由時間をぶち上げる」コンセプトのもとに、新しいビール体験の扉が開かれる。

このプロダクトの最大の特長は、近年人気を集めるビアスタイル「ヘイジーIPA」を採用している点にある。ヘイジーIPAとは、濁りのある外観と、果実のようなトロピカルな香り、そして苦味が抑えられたジューシーな味わいが魅力のビールだ。一般的なラガービールとは対極に位置するこのスタイルは、クラフトビールファンの間ではすでに定番化しつつあり、ヤッホーブルーイングとセブン-イレブンは、このスタイルを大衆市場へと広げるチャレンジに挑んでいる。

ヤッホーブルーイングの“ヘイジーチャレンジ”と2年越しの共同開発


「有頂天エイリアンズ」は、ヤッホーブルーイングが取り組む「ヘイジーチャレンジ」の一環として開発された。これは、ヘイジーIPAというスタイルを全国のビールファンに届けるためのプロジェクトで、既存の「HAZY IPA 2024」に続く第2弾となる。

開発には約2年がかけられた。セブン-イレブンという巨大流通網を持つパートナーとのタッグにより、日常的に手に取れる価格と、クラフトビールならではの驚きを両立させることを目指した。価格は税込349.80円と、クラフトビールとしては非常に手頃でありながら、ホップの量は看板商品「よなよなエール」の約1.8倍、さらにオーツ麦も過去最多量を使用するなど、製法において一切の妥協はない。

味わいのポイント——ビールを“ジュース”に近づけるという挑戦


「有頂天エイリアンズ」の味わいは、従来の“ビールらしさ”を良い意味で裏切る。パイナップルやマンゴーのようなトロピカルフルーツの香りが鼻腔を抜け、ジューシーでとろけるような飲み口は、まるで搾りたてのフルーツジュースだ。

アルコール度数は6.0%。飲みごたえを保ちつつも、苦味は非常に抑えられており、クラフトビール初心者や、ビールが苦手な人にも十分に楽しめる構成になっている。オーツ麦の効果で、口当たりはシルキーかつなめらか。飲み進めるごとにホップの多層的な香りが徐々に変化していくのも、クラフトビールならではの面白さだ。

“有頂天”という名の通り、日常の終わりにテンションを上げるビール


「自由時間をぶち上げる」というコンセプトが象徴するように、このビールは“日常の中の非日常”を演出する存在だ。家事や仕事を終えた夜、あるいは週末の自分時間。ラグジュアリーではないが、確実に気持ちを切り替えてくれるエンターテイメント性がある。

名前の「有頂天エイリアンズ」は、味のインパクトに加えて、パッケージやネーミングのユーモアにも支えられている。缶には、カラフルなエイリアンキャラクターが描かれ、「全地球人に届けたい」という大胆なキャッチコピーが踊る。このビジュアルは、若年層だけでなく、“週末ビール”を楽しむ中堅世代の心にも刺さる。

市場の反応——テスト販売は予定より1か月早く完売

2024年12月に実施された長野・山梨エリアでのテスト販売では、想定より1か月早く在庫が完売。新規購入者の割合が既存製品の約2.3倍に達したというデータも示す通り、「有頂天エイリアンズ」はクラフトビールの“入り口”としての役割をすでに果たしつつある。

ビール売り場に新たな“定番”を——そんな想いで誕生したこのプロダクトは、いわばクラフトビールの“地上戦”とも言えるセブン-イレブンでの展開により、新たなフェーズに突入している。

コンビニで買えるクラフトビールの意義と今後の展望


クラフトビールは小規模生産者が多く、これまで流通は限定的で価格も高めだった。「有頂天エイリアンズ」が300円台で手に入ることは、まさに“クラフトビールの民主化”といえるだろう。家飲みはもちろん、手土産やピクニックなど、シーンを選ばず楽しめる点も魅力だ。

今後は、コンビニ発のクラフトビールという新ジャンルが拡大する可能性もある。ラガー中心だったコンビニ棚に、香り豊かなIPAやペールエール、ベルジャンホワイトなどが並ぶ日も近いかもしれない。

よなよなエールからの進化、そしてファンカルチャーの成熟


ヤッホーブルーイングといえば、クラフトビール界の立役者「よなよなエール」で知られる存在だ。筆者自身、音楽フェスでの出店でよなよなに出会い、ヤッホー製品を飲むのがイベントの恒例となっていた。

「有頂天エイリアンズ」は、そんな老舗ブランドが新たなファン層を開拓するために放つ、“第二世代のクラフトビール”。ファンコミュニティとの深い接点を築いてきた同社が、今度は“コンビニからカルチャーを変える”挑戦を始めている。

まとめ:未知との遭遇から始まる、新しいビール体験


「有頂天エイリアンズ」は、クラフトビールファンだけでなく、これまで「ビールはちょっと…」と思っていた層にも間口を広げる存在だ。ヘイジーIPAというスタイルの魅力を、価格と流通のハードルを下げて提供し、さらにエンタメ的要素を加えたことで、“飲むことそのものが気分を上げる体験”へと昇華されている。

コンビニビールの概念を一歩進めた、セブン-イレブンとヤッホーブルーイングの渾身の一杯。これはもはや“日常に潜む異星人”かもしれない。

この記事を書いた人

J.S.A Wine Expert / Sake Diploma。酒の香りにとことん弱い。都市とローカルを往復しながら、その土地の一杯に耳をすませている。これまでに開催したワイン会・日本酒会では、のべ5000人以上に酒を注いできた。抹茶の世界にも、静かに足を踏み入れはじめたところ。飲んだ先に広がる世界を求めて、今日も一杯、のち一文。

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