日本酒

haccobaの新定番「kasu [marc]」|ワイン粕×米で生まれたクラフト酒【酒とワインの境界を超える】

ジャンルの垣根を越える“粕”の再発酵


福島県南相馬の酒蔵 haccoba -Craft Sake Brewery- が、定番酒シリーズ「kasu」の第2弾となる「kasu [marc]」を2025年4月25日より発売。米と一緒にワインの搾りかす(マール)を発酵させた、日本酒でもワインでもない、境界をまたぐ新たな酒が誕生した。

今回使用した搾りかすは、宮城県川崎町のワイナリー「Fattoria AL FIORE」が手がけたフィールドブレンド「Ohno Field Blend」の粕。メルローやマスカットベーリーAなど複数の品種が混醸された個性豊かなキュベで、綺麗な酸と渋みが、米由来の旨味と重なり合い、奥行きのある1本に仕上がっている。

ワインの搾りかすを酒づくりに活用するというユニークな挑戦は、日本酒ではタブーとされる“異素材”をあえて取り入れる、クラフトならではの自由なアプローチ。食中酒としての完成度も高く、前菜やサラダから、肉やチーズ系のメイン料理にまで、料理に寄り添うニュアンスの広さが魅力だ。

プロダクト概要

  • 商品名:kasu [marc]
  • 発売日:2025年4月25日(金)
  • 内容量:500ml
  • アルコール度数:12%
  • 精米歩合:88%
  • 原材料:米、米麹(福島県産)、ワインの搾りかす
  • 税込価格:2,420円
  • 製造所:haccoba 浪江醸造所(福島県浪江町)
  • オンラインストア:https://haccoba.com/products/kasu-marc

kasuシリーズが目指す“再編集”の思想


クラフト製造において必ず生まれる“粕(かす)”。これまでhaccobaは未利用資源としての粕に注目し、自由研究的に酒づくりに再活用してきた。

この取り組みは、文化人類学の概念「ブリコラージュ」にも通じる。役目を終えた素材を再構築し、新たな文脈の中で機能させる——。粕という言葉にあるネガティブな響きを反転させ、“発酵の野生”を肯定する思想が、このシリーズに息づいている。

ラベルに込めたメッセージ


ラベルデザインは、漢字の「粕」をグラフィック的に抽象化。手に取った瞬間に「なにこれ?」と問いを投げかけるようなポップさがありつつも、造り手の哲学が背後にある。

「捨てるものに命を宿す」。そんな思想を飲む人にやわらかく届ける、クラフトサケのあり方のひとつだ。

「kasu」という、あえてネガティブに取られがちな語をストレートにネーミングすることで、固定観念を超えてゆく。その潔さがhaccobaらしさであり、飲む側の感覚を更新してくれるきっかけにもなっている。

クラフト日本酒だからできること


クラフト日本酒という新ジャンルだからこそできる、自由な酒づくり。日本酒と名乗るには法的に「米・米麹・水・醸造アルコール」など、特定の原料に限られている。

haccobaはその制限の外側で、あえてワインの粕やスパイス、果物、ハーブなどを素材に取り込みながら、清酒づくりの技術と文化を基盤に「美味い酒」を追求している。自由と伝統のあわいで“お酒とは何か”を問い続ける姿勢そのものに、共感を覚えずにはいられない。


この記事を書いた人

J.S.A Wine Expert / Sake Diploma。酒の香りにとことん弱い。都市とローカルを往復しながら、その土地の一杯に耳をすませている。これまでに開催したワイン会・日本酒会では、のべ5000人以上に酒を注いできた。抹茶の世界にも、静かに足を踏み入れはじめたところ。飲んだ先に広がる世界を求めて、今日も一杯、のち一文。

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